循環器内科医の考える、悪玉コレステロールを下げる薬の選び方
悪玉コレステロールは、動脈硬化の関係する病気のリスクを上昇させることが知られています。動脈硬化の進行を予防するためには、お薬の選択も重要です。
このページでは、悪玉コレステロールを下げる薬についてまとめていきたいと思います。
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悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の薬の種類
主にはスタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬があります。
なかでも、スタチンはとても大切なお薬であり、スタチンで効果が不十分、またはスタチンが使えない方は他の薬の使用が検討されると考えていただければと思います。
スタチン
スタチンは、ストロングスタチンとスタンダードスタチンに大別されます。ストロングスタチンの方がスタンダードスタチンよりも効果が強く、一般的にはストロングスタチンが用いられることが多いです。(必ずしもマイルドな薬が体にやさしいというわけではありません。それぞれの方の背景に応じて、将来の動脈硬化の予防(心血管疾患の予防など)を行うことが大切であると考えられています。副作用の関係でスタンダードスタチンが選択されることもあります。)
ストロングスタチン
ロスバスタチン:2.5mg-20mg
アトルバスタチン:5mg-40mg
ピタバスタチン:1-4mg
スタンダードスタチン
プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチンなどがあります。
スタチンの用量
すでに動脈硬化の病気がある方(狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、頸動脈のプラークなど)に対しては、LDLコレステロールの目標値がとても低い値に設定されたり、高用量のストロングスタチンの内服が推奨されています。1,2,3)
日本のガイドラインでは、冠動脈疾患のある高リスクな方では、LDLコレステロール70mg/dL未満が推奨1,2)されており、海外では55mg/dL未満とさらに低い数値が推奨されています。3)
本当にそんなに必要なのか?と思われる方がいるかもしれませんが、これまでの臨床研究の結果からはLDLをしっかりと低下させたり、ストロングスタチンをしっかりと内服する重要性が示されています。
ここでは、1つの有名な臨床研究をご紹介します。
PROVE-IT:急性冠症候群を起こした方で、プラバスタチン40mgを内服した場合と、アトルバスタチン80mg(海外では最大用量は80mgです。)を内服した場合では、後者の方がよい結果となりました。つまり、ACSを起こした方では高用量のストロングスタチンを内服したほうがよいという結果になりました。4)
このような臨床研究がいくつも行われ、現在では、特にリスクの高い方では積極的に高用量のストロングスタチンによってLDLの値を低く保つことが重要と考えられています。
スタチンの副作用
稀ですが、有名な副作用として横紋筋融解症があります。服用後、筋肉痛や褐色の尿がでる、などの症状があった際は服用を中止する必要があります。その他、定期的な採血で副作用の確認を行います。
エゼチミブ
小腸から悪玉コレステロールが取り込まれるのを防ぐお薬です。スタチンとの併用で、心血管イベントのリスクを下げることが示されています。スタチンが筋肉痛などの副作用で使用できない場合、十分量のスタチンを内服しても効果が不十分な場合に使用されます。
スタチンとの合剤があるので、日々の内服の負担を減らすことができます。
ロスーゼット:ロスバスタチン+エゼチミブ(LD:ロスバスタチン2.5mg +エゼチミブ10mg、HD:ロスバスタチン5mg +エゼチミブ10mg)
アトーゼット:アトルバスタチン+エゼチミブ(LD:アトルバスタチン10mg +エゼチミブ10mg、HD:アトルバスタチン20mg +エゼチミブ10mg)
リバゼブ:ピタバスタチン+エゼチミブ(LD:ピタバスタチン2mg +エゼチミブ10mg、HD:ピタバスタチン4mg +エゼチミブ10mg)
PCSK9阻害薬
肝臓でのLDLコレステロールの取り込みを促進させることで、LDLコレステロールの値をしっかりと低下させることのできるお薬です。
注射薬であり、また、薬価も高いことがデメリットです。
リスクの高い方で使用が検討されます。
参考文献
1)日本循環器学会:2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
2)日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
4)N Engl J Med. 2004;350(15):1495. Epub 2004 Mar 8.
・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
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文責:院長・循環器専門医
最終更新日:2025/1/11