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睡眠時無呼吸症候群(閉塞性睡眠時無呼吸)

✔閉塞性睡眠時無呼吸(睡眠時無呼吸症候群)とは、睡眠中に気道が塞がれることによって呼吸が一時的に停止または低下する状態です。

✔閉塞性睡眠時無呼吸は、寝ている時のいびきがうるさいと人に指摘されて気づく方がほとんどです。他に日中の強い眠気寝不足感を感じる方も多くいます。脳卒中、心筋梗塞、高血圧などのリスクが上昇するため、適切に治療を行うことが大切です。

当院では睡眠時無呼吸の検査を行い、必要があった場合にはCPAPを含めた治療を行っております。

✔定期通院時のオンライン診療に対応しています。

閉塞性睡眠時無呼吸とは?

閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)は、寝ている時に息の通り道である気道が閉塞し、呼吸が止まってしまう病気です。呼吸がとまり、酸素不足になり、就寝中に覚醒を繰り返すことで睡眠の質が大きく低下し、日中のひどい眠気集中力の低下などにつながることがあります。また、動脈硬化の進行など、心血管系への影響も大きく、適切に治療する必要があります。

睡眠時無呼吸の主なタイプ

睡眠時無呼吸症候群とは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)を合わせた呼称です。中枢性睡眠時無呼吸は比較的稀な病気であり、一般的にイメージされる睡眠時無呼吸は、上気道の閉塞が原因となる閉塞性睡眠時無呼吸であるため、本ページでは、より医学的に正確な単語である、閉塞性睡眠時無呼吸と記載しています。

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:Obstructive Sleep Apnea

眠っている間に、筋肉がリラックスしてゆるみ、舌根が息の通り道(気道)一時的に閉塞させることで呼吸が停止します。太っていたり下顎が小さかったり扁桃が大きかったりすると、おこりやすくなります。気道が完全には閉塞していない場合はいびきとなります。

中枢性睡眠時無呼吸(CSA:Central Sleep Apnea

脳が一時的に呼吸に必要な信号を送るのをやめてしまうために起こります。基礎疾患や薬剤が原因となります。

混合型睡眠時無呼吸

閉塞性と中枢性の両方の特徴を持つタイプです。

閉塞性睡眠時無呼吸の主な症状

下記の症状があるからといって、睡眠時無呼吸とは限りませんが、睡眠時無呼吸を疑うきっかけとなります。3)

いびき

特に、規則的ないびきが次第に静かになり、音がしなくなってから急に大きないびきの音が再開する場合は、OSAに典型的です。

日中の過度の眠気

エプワース問診票を利用して、眠気の点数をつけてみましょう。(症状のセクションの下にあります)

繰り返しの呼吸停止

寝ているため自分では気づきにくく、多くの場合は他の人に指摘されて初めて気がつきます。

窒息感の自覚

OSAの可能性が高くなります。

夜間の頻繁な目覚め
朝の頭痛
夜間の頻尿

OSAに伴って、胸腔内が陰圧となり、心房性利尿ペプチドが分泌され、尿の濃縮が妨げられ、夜間の尿量、排尿回数が増加すると考えられています。1)

夜間の動悸(胸がドキドキする)

夜間の心房細動などの不整脈や胸痛の原因となることが報告されています。

 

エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:ESS)

ESSは、主観的な眠気を評価する時に用いられる問診票です。

ESSが11点以上であった場合に、「過度の眠気」があると呼び、特に睡眠時無呼吸の検査が勧められます。

ESS

もし以下の状況になったとしたら、どのくらいうとうとする(数秒~数分眠ってしまう)と思いますか?以下の状況になったことが実際なくても、その状況になればどうなるかを想像してお答え下さい。すべての項目にお答えしていただくことが大切です。

1:すわって何かを読んでいるとき(新聞、雑誌、本、書類など)

2:すわってテレビを見ているとき

3:会議、映画館、劇場などで静かにすわっているとき

4:乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき

5:午後に横になって、休息をとっているとき

6:すわって人と話をしているとき

7:昼食をとった後(飲酒なし)、静かにすわっているとき

8:すわって手紙や書類などを書いているとき

 

うとうとする可能性はほとんどない→0点

うとうとする可能性は少しある→1点

うとうとする可能性は半分くらい→2点

うとうとする可能性が高い→3点

 

各項目に当てはまる点数(0・1・2・3)を合計して下さい。

 

5点未満:日中の眠気は少ない

5〜10 点:日中の軽度の眠気がある

11点以上過度の眠気がある

合併症

睡眠時無呼吸の方では、生活習慣病を含む、様々な病気のリスクが上昇することが知られています。そのため、睡眠時無呼吸のある方ではCPAPによる治療が推奨されます。

日中の眠気・集中力の低下

睡眠の質が低下することにより、集中力や記憶力が低下します。交通事故のリスクが2-3倍に上昇すると報告されています。3)

心血管系疾患

高血圧、心房細動などの不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞などのリスクが上昇します。3)

糖尿病とメタボリックシンドローム

血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンへの反応が低下します。(インスリン抵抗性が上昇します。)その結果、2型糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが上昇します。AHI≧30の方では、糖尿病のリスクが30%上昇すると報告されています。3)

その他

脂肪肝や通風のリスクが上昇します。3)

検査

簡易型ポリソムノグラフィー(簡易型PSG)

携帯型の装置を就寝時に装着し、睡眠中の呼吸状態や心拍数、酸素飽和度(SpO2)を測定します。簡易型ポリソムノグラフィーでAHIが40以上であった場合はCPAPによる治療が保険適応となります。また、AHIが40以下であった場合は必要に応じて精密ポリソムノグラフィーを受けていただきます。

精密ポリソムノグラフィー(精密PSG)

簡易型検査に加えて、脳波、筋電図、心電図を計測します。この検査でAHIが20以上であった場合は、CPAPによる治療が保険適応となります。

 

当院での検査の流れ



 

治療と対策

減量

太っている方の場合は痩せることで症状が改善することがあります。

横向きに寝る

重症の方では効果に乏しい場合が多いとされています。リュックを背負ってねたりパジャマの背中にポケットを作り、テニスボールなどをいれることで横向きにねる癖をつけることなどもありますが、睡眠の質の低下につながることもあります。

アルコール、睡眠薬を控える

アルコール、睡眠薬は喉の奥の緊張を低下させ、気道が狭くなる原因になります。

CPAP(連続陽圧呼吸療法)

最も一般的な治療法で、睡眠中に持続的に気道に圧力をかけることで気道の閉塞を防ぎます。簡易型ポリソムノグラフィーでAHIが40以上、精密ポリソムノグラフィーでAHIが20以上で、CPAP治療が保険適応となります。効果の高い治療法であり、閉塞性睡眠時無呼吸のある方に推奨される治療法です。

マウスピース(口腔内装置:OA:Oral Appliance)

歯科医院での治療となります。

下顎を前方に出した位置にすることで、気道の閉塞を防ぎます。効果には個人差があります。

マウスピース(OA)が適している方

重症度が低くてCPAPの適応とならない方。

CPAPの装着が困難な方。

出張などが多く、CPAPによる治療が難しい方。

マウスピース(OA)で気をつける点

唾液の量の増加、唾液の量が減ることでの乾燥や違和感、起床時のかみ合わせの違和感などが現れることがあります。

効果には個人差があります。

長期に使用することで、歯列が前に移動してしまうことがあります。定期的な歯科受診が必要です。

その他の治療法

手術(上気道手術や顎矯正手術)・植込み型舌下神経刺激療法など

専門施設での治療となります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群は、いびきや日中の眠気をきっかけとして受診される方も多い病気です。

一方で、脳梗塞や心筋梗塞といった、動脈硬化関連疾患をはじめとして、さまざまな病気との関係が指摘されています。

症状に気がついた場合は、適切に治療することが重要です。当院では定期通院のオンライン診療に対応しています。

参考文献

1) Sleep. 2004 Feb 1;27(1):139-44.

2)UpToDate:Obstructive sleep apnea: Overview of management in adults

3)UpToDate:Clinical presentation and diagnosis of obstructive sleep apnea in adults

4)日本循環器学会:循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン 2023年改訂版

5)日本呼吸器学会:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、認定内科医

最終更新日:2025/1/9

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