メニュー

脂質異常症(コレステロールが高い)【循環器専門医が解説】

LDLコレステロールの値とともに、どの薬でコレステロールの値を下げるか、ということがとても大切です。原則としてスタチンと呼ばれる薬が優先されます。

コレステロールの目標値は個々人に応じて異なります。下記の表を参考に、ご自身の目標値を確認してみましょう。

✔当院では、循環器内科専門医が、個々人の状況にあわせて、適切な治療目標値を設定し、最適な薬を選択できるように努めています。

悪玉コレステロールを下げる薬の選び方

脂質異常症(高コレステロール血症)とは?

脂質異常症とは、主にはLDLコレステロールの値や中性脂肪の値が高いことを指します。動脈硬化が進むことで、狭心症、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。中性脂肪の測定は、厳密には、前日の夜から10時間以上の絶食水やお茶などカロリーのない水分摂取は可能となっています。これは、中性脂肪の値が食事の影響を受けるためです。

種類

脂質異常症にはいくつかのタイプがあります。

高LDLコレステロール血症

「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが多い状態。

低HDLコレステロール血症

「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールが少ない状態。

高トリグリセリド血症

中性脂肪が多い状態。

家族性高コレステロール血症

若くして著名にLDLコレステロールの値が高くなります。若年でも動脈硬化が進むため、早期の薬物治療が推奨されます。くわしくは、こちら

治療目標

文献4:日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より抜粋

動脈硬化性疾患発症予測ツール

日本動脈硬化学会のページより、ご利用いただけます。

リンクはこちら

 

原因

脂質異常症の原因は、遺伝的要因(体質)と生活習慣の両方にあります。不健康な食事運動不足喫煙過度のアルコール摂取肥満などがリスクを高めます。実際、通院中の方でLDLコレステロールの値が下がっている方の中には、「犬の散歩をはじめた」、「ウォーキングをはじめた」という方が多くいらっしゃいます。

一方で、生活習慣の改善はもちろんですが、体質の影響も少なからずあるため、状況に応じて積極的に薬を飲むことも大切です。

 

症状

多くの場合、脂質異常症自体には特有の症状がありません。しかし、長期間LDLコレステロールが高い状態が続くと、動脈硬化の進行につながり、狭心症心筋梗塞脳梗塞などのリスクを高めることが知られています。

 

診断

脂質異常症の診断は、血液検査によって行われます。空腹時に採血を行い、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値を測定します。

 

治療

生活習慣の改善

・野菜中心の健康的な食事

・定期的な運動

体重を減らす(減量)

 

薬物療法

どのコレステロールを下げる薬がよいかは多くの研究で検討されています。同じようにコレステロールの値を下げても、とある薬ではほとんど動脈硬化の進行をとめられなかった、ということが知られており、現在ではスタチンと呼ばれる薬が第一選択薬となっています。1)スタチンという薬が身体に合わない方の場合、当院では、より副作用の少ないスタチン、それでも身体に合わなかった場合には違う種類の薬に変更しています。下記がよく使われる薬剤のリストです。

くわしくは悪玉コレステロールを下げる薬の選び方をご覧ください。

スタチン

多くの場合、脂質異常症の第一選択となるお薬です。

稀ですが、有名な副作用として横紋筋融解症があります。服用後、筋肉痛や褐色の尿がでる、などの症状があった際は服用を中止する必要があります。

小腸コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ)

スタチンが服用できない方や、スタチンでは効果が不十分な場合に処方されることがあります。

フィブラート系薬剤

中性脂肪が高い場合などに使用されることがあります。

PCSK9阻害薬

LDL受容体分解促進タンパク質であるPCSK9をターゲットとする注射薬です。強力にLDLコレステロールの値を低下させる効果があります。高価です。適応に関しては、主治医としっかり相談してください。

 

まとめ

脂質異常症は多くの場合、自覚症状がなく進行します。定期的な血液検査でご自身の状態を把握していただき、必要に応じて食習慣、運動習慣の改善、おくすりの内服が大切です。また、体質(遺伝的な要因)も大きく関係するので、LDLコレステロールの値が高い方は、一度医師にご相談されることをおすすめします。

コレステロール値を適切に管理することで、心血管疾患などの動脈硬化による病気のリスクを減らし、重大な病気の予防を行っていきましょう。

 

サプリでコレステロールの薬が下がりました。薬は飲まなくてもいいでしょうか?

サプリの内容を含めた状況により異なりますが、一般的にはお薬の内服が望ましいと考えています。

コレステロールの薬には様々な種類がありますが、とある薬を飲んで、LDLコレステロールの値が下がっても、動脈硬化の結果おこる心筋梗塞などの病気をあまり減らすことができなかった、という研究結果があります。ですので、サプリでコレステロールの値が下がったとしても、スタチンなどの、しっかりと検証された薬による治療が望ましいと、私は考えています。

LDLコレステロールの計測方法の直接法、間接法とは何ですか?

直接法:直接LDLコレステロールの値を測る方法です。

間接法:総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値から算出します。間接法では、中性脂肪が400mg/dlを超える方では使用できません。また、中性脂肪は食事の影響を受けるため、空腹での採血が必要です。

両者の計測方法にはそれぞれのメリット、デメリットがあります。

両者の値は完全には一致しないため、経時的な推移をみるためには、どちらか一方の計測方法を使うことが推奨されています。2)

当院では、食事の影響を受けない直接法を採用しています。

一度コレステロールの薬を飲むと、やめることはできませんか?

コレステロールの値が高くなる原因を改善することができ、お薬を飲まなくてもコレステロールの値を低く保つことができる場合には、中止することができるかもしれません。一方で、体質や年齢などによりどうしてもコレステロールの値が高くなってしまうことがあります。そのような場合には、薬を飲むデメリット(副作用や通院・内服の手間)よりもメリット(狭心症や脳梗塞などの動脈硬化による病気を予防する効果)が上回ると考えられます。ですので、コレステロールが高い方は、将来の病気の予防薬と捉えて内服をしていただくことをおすすめしています。

参考文献

1)UpToDate:Llow density lipoporotein cholesterol lowering therapy in the primary prevention of cardiovascular disease 

2)UpToDate:Measurement of blood lipids and lipoproteins 

3)UpToDate:Hypertriglyceridemia in adults: Management 

4)日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUp to Dateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、循環器専門医

最終更新日:2025/1/11

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME