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花粉症の治療法と対策を徹底解説【内科医が解説】

✔花粉症の薬にはたくさんの種類があります。当院では個々人に応じた飲み薬(抗ヒスタミン薬)、目薬、点鼻薬を選択するお手伝いをしています。

✔当院では舌下免疫療法(スギ花粉、ダニ)を行っています。舌下免疫療法を行うことで、スギ花粉症の症状が大きく改善することが知られています。

✔花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)により、知らず知らずのうちに集中力の低下、判断力の低下、作業効率の低下をおこすことインペアード・パフォーマンスと呼びます。

✔当院では、必要と判断した場合にアレルギー検査を行っています。結果の解釈には、実際の症状との比較などの総合的な判断が必要となります。

花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)の選び方についてはこちら

花粉症の目薬について、詳しくはこちら

舌下免疫療法について、詳しくはこちら

花粉症とは?

花粉症は、特定の植物の花粉に対するアレルギー反応です。春先を中心に、スギやヒノキの花粉が飛散する時期に多くの人が症状を訴えますが、年間を通じて様々な植物の花粉が原因で症状が現れることもあります。また、花粉症の時期には黄砂が飛来していることもあり、黄砂のアレルギーによって、花粉症のような症状がでることがあります。

 

症状

鼻水や鼻づまり

くしゃみ

目のかゆみ、充血、涙目

のどのかゆみや咳

頭痛や疲労感

 

検査

多くの場合は、症状から診断されます。当院では、状況に応じて血液検査によるアレルギーの検査も行っています。また、ハンノキやシラカンバなどが代表的ですが、これらの花粉にアレルギーがある方で、果物や野菜にもアレルギーの症状がある方がいます。これは、花粉ー食物アレルギー症候群と呼ばれます。

花粉ー食物アレルギー症候群についてはこちら

対策

アレルゲンの回避

換気を控える空気清浄機を使用する、外出時にはマスク眼鏡を利用する、洗濯物を室内干しにする、帰宅後は衣類を払うなどがあります。

鼻うがい

鼻うがいは鼻の中のアレルゲンを洗い流す効果が期待され、有効性が報告されています。1)

 

花粉症の薬

抗ヒスタミン薬、点鼻薬、点眼薬などが用いられます。

当院に受診された際には、患者さんのご希望をお伺いし、一緒に最適なお薬を見つけることができるように心がけています。

抗ヒスタミン薬(飲み薬)

抗ヒスタミン薬は強さや眠気などの特徴があり、個々人にあった薬をみつけることで、より快適に過ごすことができます。また、抗ヒスタミン薬の中には添付文書(薬の説明書)で、自動車などの運転が禁止されているものもあるため、注意が必要です。運転に関して制限のないお薬は、ビラノア(ビラスチン)や、アレグラ(フェキソフェナジン)、デザレックス(デスロラタジン)、クラリチン(ロラタジン)があり、眠気の少ない抗ヒスタミン薬としてよく使用されます。ビラノアは、しっかりした効果と眠気が少ないことからよく使われますが、空腹時(食前1時間以上前、食後2時間以上後)に内服する必要があるため、就寝前に飲まれることが多いです。

花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)の選び方

ロイコトリエン受容体拮抗薬

プランルカスト(オノン)や、モンテルカスト(キプレス、シングレア)が使われます。鼻閉の改善に効果的です。2)

プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬

ラマトロバン(バイナス)が使われます。鼻閉の改善などに効果的です。抗血小板薬、抗凝固薬など、一部の薬との飲み合わせに注意が必要です。効果発現までに1〜2週間ほど、少し時間がかかります。2)

全身ステロイド薬

のみ薬、注射でのステロイドの使用は副作用の懸念があり、慎重な判断が必要です。2)

当院では原則として、花粉症に対する、のみ薬のステロイドや注射でのステロイドは処方しておりません。

下記の、点鼻薬でのステロイドは局所に作用し、ほとんど血中には吸収されず、吸収されてもすぐに分解されるため、安全性が高いため、おすすめです。2)

点鼻薬(点鼻ステロイド)

鼻水の症状でお困りの場合には、眠気などの副作用がほとんどない点鼻薬(点鼻ステロイド)が国際的にも広く使われています。1)

また、目の症状にも効果があります。2)

内服や注射薬のステロイドとは異なり、安全性が高いのも特徴です。

ナゾネックス(モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)

1日1回タイプです。液体タイプなので使用後に液だれがしたり、噴霧時に刺激感を感じる方もいます。ジェネリック品では、1ヶ月あたり、3割負担で約300円となっています。(2024/2現在)

アラミスト(フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

1日1回タイプです。ナゾネックスと同様に液体タイプです。ジェネリック品では、1ヶ月あたり、3割負担で約360円となっています。(2024/2現在)

エリザス(デキサメタゾンシペシル酸エステル)

粉末タイプの点鼻薬であり、液だれがせず、また、噴霧時の刺激が抑えられており、液体タイプの点鼻薬が苦手であった人にも試していただきたいと思います。現時点ではジェネリック医薬品はなく、3割負担で約740円となっています。(2024/2現在)

点鼻用血管収縮薬

鼻閉に効果があり、即効性が期待できます。薬局などでも購入できます。

連続使用により効果の持続時間が短くなってしまうため、使用は10日くらいまでにするよう推奨されています。2)

点眼薬

コンタクトを使用中にも使えるもの1日2回/4回タイプのものなどの種類があります。(1日2回タイプのものはやや高価です。)

花粉症の目薬について、詳しくはこちら

舌下免疫療法

スギ花粉症(と、ダニアレルギー)の根本的な治療法です。特定のアレルゲンに対して徐々に体を慣れさせる治療法です。2024年現在、日本ではスギ花粉とダニに対する薬が保険適用されています。

舌下免疫療法に関しては、詳しくはこちら

 

インペアード・パフォーマンスとは?

花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)を使用することで、知らず知らずのうちに集中力の低下、判断力の低下、作業効率の低下をおこすことです。漫然と薬を飲むことはせずに、点鼻薬や眠気の少ない抗ヒスタミン薬を適切に使用することが大切であると考えられています。

 

まとめ

花粉症は多くの人が経験するアレルギー疾患ですが、適切な治療と予防策によって快適に生活することができます。当クリニックでは、個々人に応じた花粉症の治療を行うことで、皆様の快適な生活をサポートいたします。

 

花粉の飛散時期(東海地方)

東海地方の花粉状況などはこちらのサイトなどを参考にしてください。

下記は、岸川禮子ほか:花粉誌 2020;65:55-66. を参考に作成。

ハンノキ:1月〜5月

スギ:10月〜4月(ピークは2月中旬から3月中旬)

ヒノキ:3月〜5月(ピークは4月中旬)

シラカンバ:なし

イネ科:4月〜10月

ブタクサ:9月

ヨモギ:9月〜10月

カナムグラ:9月〜10月

よくある疑問Q&A

点鼻ステロイドはステロイド、と書いてありますが、気をつけることはありますか?

副作用が少なく、安全性の高いお薬です。

ステロイド、と聞くと、効果が強そう、副作用が強そう、という印象があるかもしれません。確かに良く効きます!が、実は副作用が非常に少ないというのが大きな特徴です。噴霧した鼻という場所で作用(局所的に作用)するため、全身にはほとんど作用しません。

一方で、内服薬のステロイドは慎重に使用しなくてはありません。当院では、花粉症に対して内服のステロイドは原則処方しておりません。

点鼻薬にはどのような種類がありますか

ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン点鼻薬、ステロイド点鼻薬、血管収縮薬の4つがあります。

この中で、おすすめはステロイド点鼻です。

また、血管収縮薬は長期間使用を繰り返すことで薬剤性鼻炎の原因となるため注意が必要です。(当院では処方しておりません。)

1〜2週間などの短期の仕様にとどめることが大切です。一方、効果発現が5〜15分程度と早く、即効性があります。

自分にピッタリの薬はどうしたら見つかりますか?

特に飲み薬である抗ヒスタミン薬はたくさんの種類があり、どの薬が自分にあっているのかは、実際に試してみるしかないと考えています。

院長自身も花粉症を持っており、いろいろな薬を試してみましたし、いろいろな人に花粉症の薬の使用感について聞いてみました。しかし、最終的には自分で色々な薬を飲んでみるしかないのではないかと思っています。

当院では、眠気の強さ、効果の強さ、服用回数などを考慮しつつ、個々人にぴったりの薬が見つかるお手伝いをしたいと考えています。

ちなみに、院長は、昔はとある1日2回タイプのお薬を眠気と症状に応じて適宜調節していましたが、現在は眠気の少ないタイプの1日1回タイプのお薬をほとんど毎日飲んでいます。

お酒を飲むと花粉症が悪化するような気がしますが、関係ありますか?

はい、お酒を飲むと花粉症の症状は悪化するかもしれません。

睡眠不足、疲れ、飲酒、喫煙(受動喫煙を含む)、風邪、月経(前)などは、花粉症の症状を悪化させます。お酒を飲むと、疲れがとれなかったり、寝不足になってしまうかもしれませんので、それも影響するかもしれません。

花粉症のシーズンは、特に健康管理に気をつける必要があるかもしれませんね。

花粉症の薬で眠くならないものはありますか?

眠くなりやすいお薬と、眠くなりにくいお薬があります。

点鼻薬や点眼薬では眠気がありません。ですので、鼻水や目のかゆみで困っている方は、点鼻薬、点眼薬を優先して使うことで、眠気を抑えることができます。

また、飲み薬のなかでも眠くなりにくい薬がありますので、眠気が気になる方はそちらを率先して使うこととおすすめします。

院長自身、花粉症の飲み薬(抗ヒスタミン薬)でとても眠くなってしまう体質ですので、眠気に困る方は一度ご相談いただければと思います。

舌下免疫療法はだれでも受けられますか?

はい、多くの方で受けていただけます。詳しくは、こちらのページをご覧ください。

参考文献

1)UpToDate: Allergic rhinitis: Pharmacotherapy of allergic rhinitis

2)日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会:鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版

 

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、認定内科医

最終更新日:2025/1/8

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