舌下免疫療法
✔舌下免疫療法は、アレルギーを根本的に治療する方法です。
✔日本では、スギ花粉、ダニに対するアレルギーが保険適応となっています。
✔舌下免疫療法は、花粉症の他に、アトピー性皮膚炎、喘息にも効果があるとしられています。
舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法とは、アレルギーの根本的な治療を目指す、アレルゲン免疫療法のひとつです。
例えば花粉症のある方に、目薬や飲み薬で症状に対して治療を行うことを対症療法といいます。
アレルゲン免疫療法とは、アレルゲンを少量ずつ体に投与することで、少しずつ体をアレルゲンに慣らし、アレルギーを治すことを目指す治療です。アレルゲン免疫療法には、皮下注射で行う皮下免疫療法(SCIT)と舌の下に薬を置いてアレルゲンを投与する舌下免疫療法(SLIT)の2つがあります。(当院では舌下免疫療法のみ行っており、皮下免疫療法は行っておりません。)
舌下免疫療法はスギ花粉に対するものと、ダニのアレルギー性鼻炎に対するものの2種類が日本では保険適応になっています。舌下免疫療法を行うことで、花粉症やアレルギー性鼻炎の症状の改善が期待できます。また、アトピー性皮膚炎や喘息に対しても予防・治療効果があるとしられています。
対象となる方
・スギ花粉症の方
・ダニアレルギーの方:例えば、1年中鼻水が止まらない方(通年性のアレルギー性鼻炎のある方)などでは、ダニアレルギーの可能性があります。
治療期間
3〜5年(できれば5年間)の治療を続けることで、その後も長期的に効果が持続するとされています。
メリット
・アレルギーの根本的な治療になります。例えばスギ花粉症のある方では、花粉症の時期に使うお薬を減らしたりなくしたりすることができます。特に、抗ヒスタミン薬で眠気がでやすい人などは、メリットが大きいかもしれません。(インペアード・パフォーマンスとは)
・今後の、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患になるリスクを減らすことができます。
・すでに気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある方でも、今後の症状が軽くなることが期待できます。
デメリット
・治療期間が長期間(3〜5年)になります。
・効果がすぐにでるわけではありません。
・全員に効果があるわけではありません。(臨床研究のデータでは、20%の方が全く症状がなくなり、60%の方が、症状が軽くなりました。)
・アナフィラキシーなどの、重篤な副作用が起きることがあります。
投与できない方
妊娠中、授乳中の方
抗がん剤治療中の方
自己免疫疾患に罹患している方
βブロッカーを内服している方
気管支喘息が不安定な方
治療の流れ
(1)1回目の診察
治療が可能かどうかの確認をおこないます。
必要に応じてアレルギー検査を行います。(検査結果は当日はわかりません。)
次回の診察日(アレルギー検査の結果説明やアレルゲンの初回投与をおこなう日)を決めます。
すでに舌下免疫療法を行っている方や、アレルギー検査の結果をお持ちの方などでは、この日から舌下免疫療法をはじめられます。
(2)アレルゲンの初回投与
当院にてアレルゲンの初回服薬をおこないます。
服用の後は30分間、当院に滞在していただき、経過をみます。
この日は、詳細な説明、舌下免疫療法を受ける同意書の記入手続きもあり、1時間30分ほどを予定しています。
(3)はじめの1週間
はじめの1週間は、アレルゲンの量が少ない薬を服用します。
スギ花粉のアレルギーの治療(シダキュア)の場合、はじめの1週間は2000JAU, その後5000JAUに増量します。
ダニのアレルギーの治療(ミティキュア)の場合、はじめの1週間は33000JAU, その後10000JAUに増量します。
(4)2週目の受診
はじめの1週間、少ないアレルゲンの量のお薬を問題なく服用ができた場合には、アレルゲンの量を増量し、治療します。
受診していただき、体調などを確認させていただきます。
(5)4週目の受診
増量後2週間、問題なく服用できていることを確認します。
問題なければ、そのまま服用を続けていただきます。
症状に応じて、アレルギーの薬(抗ヒスタミン薬など)を併用します。
その後は状況により、1〜3ヶ月おきに通院していただきます。
開始時期に関して
※スギ花粉に対する舌下免疫療法は、スギ花粉の飛散していない、6月から11月中に開始する必要があります。ダニアレルギーに対する舌下免疫療法は、いつでも開始することができます。
服用上の注意
・薬は、1日1回、舌の下に1分間保持した後、飲み込みます。その後、5分間はうがいや飲食をしないでください。
・内服前や、内服後2時間は激しい運動、入浴、飲酒は控えてください。
・毎日定期的に服用できない方は、舌下免疫療法を行うことができません。
よくある疑問Q&A
何歳から始められますか?
5歳以上の方から可能です。
薬を服用し忘れました。
・その日のうちに気がついた場合、その日の用量を服用してください。
・翌日に気がついた場合、前日の用量を服用し、内服日を後ろ倒しにしてください。
・服用したか不確かな場合、その日は服用しないでください。
間違って、薬を1分間舌の下で保持せずに飲み込んでしまいました。
その日は再度服用しないでください。翌日、改めて前日の用量を服用してください。
治療を開始してから、どれくらいで効果がありますか?
血液検査のデータでは数ヶ月後から効果が出現しています。しかしながら、実際に大きく効果を実感するのは、もう少し後かもしれません。スギ花粉症の方の場合、治療をはじめてから、次の、次のシーズンから効果を実感される方が多い印象です。
・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。
文責:院長、認定内科医
最終更新日:2025/1/11