甲状腺機能低下症(橋本病など)
✔冷え、倦怠感、無気力、下肢のむくみ、便秘などの症状は、甲状腺機能低下症の可能性があります。
甲状腺機能の異常については、こちら
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)についてはこちら
甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症とは、血中の甲状腺ホルモンの作用が低下している状態です。甲状腺機能低下症の原因として、主には橋本病が挙げられます。このページでは、橋本病について説明します。
橋本病(慢性甲状腺炎)とは?
橋本病(慢性甲状腺炎)は、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気です。
10%の方では明らかな甲状腺機能の低下がおこり、20%の方では軽度の甲状腺機能の低下がおこりますが、無症状です。そして、残りの70%の方では甲状腺機能は正常です。
甲状腺機能の低下がおこると、冷え、倦怠感、無気力、下肢のむくみ、便秘などの様々な症状がでることがあります。
橋本病の名前の由来
橋本病(Hashimoto's thyroiditis)という病名は、1912年に初めてこの病気を発表した日本人医師、橋本策(はかる)の名前にちなんでつけられています。
橋本病の原因
免疫は、体を外部からの侵入者(ウイルスや細菌など)から守るための大切なシステムですが、自分を攻撃する抗体(自己抗体)を作ってしまうことがあります。橋本病では、甲状腺に対する自己抗体ができることで、甲状腺が免疫システムにより攻撃を受け破壊されることで、甲状腺機能が徐々に低下します。
検査
血液検査
甲状腺の機能、および甲状腺に対する自己抗体を測定します。
甲状腺機能検査
甲状腺刺激ホルモン(TSH)と、甲状腺ホルモン(FT4、FT3)の値を確認します。
抗甲状腺抗体
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)、抗サイログロブリン抗体(TgAb)の有無を確認します。
甲状腺機能検査に関しては、詳しくはこちらのページもご覧ください。
甲状腺エコー
甲状腺の腫大、腫瘍の合併を確認します。
治療
レボチロキシンなどの甲状腺ホルモンを内服薬により補充します。
一般的に、甲状腺ホルモン薬は半減期が1週間程度と長いため、服用時間がずれても、血中濃度に大きな影響はないとされていますが、空腹時や就寝前の方が吸収がよいとされています。また、鉄剤やコーヒーは吸収を妨げますので、摂取時期をずらす必要があります。
まとめ
甲状腺機能低下症は、長期にわたって内服が必要となることが多い病気です。当院ではストレスなく通院を続けていただける環境をととのえていきたいと考えています。
参考文献
1)日本甲状腺学会:甲状腺疾患診断ガイドライン2024
2)UpToDate:Treatment of primary hypothyroidism in adults
・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。
文責:院長、認定内科医
最終更新日:2025/1/11