メニュー

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)など

✔甲状腺機能亢進症は、バセドウ病などが有名です。

動悸、頻脈、手の震え、発汗の増加や体重減少、イライラなどの原因となることがあります。

甲状腺機能の異常については、こちら

甲状腺機能低下症(橋本病など)についてはこちら

甲状腺機能亢進症と甲状腺中毒症

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺が過剰にホルモンを分泌する状態を指します。そして、甲状腺ホルモンの働きが過剰である状態のこと甲状腺中毒症といいます。甲状腺ホルモンは、甲状腺で作られたあとに血液により全身の臓器に運ばれて、代謝を活発にしたり、成長を促進したりと大切な働きをしています。一方で、その量が過剰になりすぎると、動悸、頻脈、手の震え、発汗の増加や体重減少、イライラするなどの症状が出現します。

甲状腺中毒症には、①甲状腺でのホルモン産生が増加して甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症と、②甲状腺が壊れることで、中の甲状腺ホルモンが血中にもれだして甲状腺ホルモンが過剰となる場合、の2つがあります。

 

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)について

甲状腺機能亢進症としては、バセドウ病が代表的です。

バセドウ病

免疫は、体を外部からの侵入者(ウイルスや細菌など)から守るための大切なシステムですが、自分を攻撃する抗体(自己抗体)を作ってしまうことがあります。バセドウ病では抗TSHレセプター抗体(TRAb)が甲状腺を刺激することで、甲状腺ホルモンが過剰となってしまいます。

バセドウ病では、3つの有名な症状があります。(メルセブルグの三徴)

甲状腺腫大(甲状腺のはれ)

眼球突出:およそ1/3の方に出現するといわれています。

頻脈

その他、甲状腺中毒症の症状が現れます。

 

バセドウ病の名前の由来

バセドウ病(Basedow disease)という病名は1840年にこの病気を発表したドイツ人医師Karl Adolph von Basedow にちなんで名づけられています。なお、バセドウ病はグレーブス病(Graves' disease)とも呼ばれます。グレーブス病は、1835年に初めてこの病気を報告したイギリス人医師Robert James Gravesにちなんで名付けられています。日本はドイツ医学の流れをくむこともあり、バセドウ病という呼び方のほうが一般的となっています。

 

バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症

機能性甲状腺結節TSH産生下垂体腫瘍妊娠性一過性甲状腺機能亢進症があります。

 

上記以外で甲状腺中毒症をきたす病気

甲状腺が壊れることで、貯蔵されていた甲状腺ホルモンが血中にもれだして甲状腺ホルモンが過剰となる場合

亜急性甲状腺炎

ほとんどの方で上気道炎などの感染後におこり、ウイルス感染との関連が指摘されています。甲状腺の痛みや発熱を伴います。甲状腺に炎症が起こり、甲状腺ホルモンを産生する甲状腺の濾胞細胞がこわれ、中の甲状腺ホルモンが流出することにより、甲状腺ホルモンが過剰となります。甲状腺機能亢進症の症状は一過性であり、多くの場合は2〜3ヶ月で甲状腺機能は正常にもどります。

無痛性甲状腺炎

甲状腺に炎症が起こり、甲状腺ホルモンを産生する甲状腺の濾胞細胞がこわれ、中の甲状腺ホルモンが流出することにより、甲状腺ホルモンが過剰となります。自己抗体との関連が指摘されています。甲状腺機能亢進症の症状は一過性ですが、10%の方が何度か無痛性甲状腺炎を繰り返し、その中で20〜30%の方が慢性甲状腺炎へと進展します。

甲状腺ホルモンの過剰摂取

甲状腺ホルモンが含まれているサプリや薬などを摂取することでおこることもあります。

 

バセドウ病の治療

抗甲状腺薬

バセドウ病では、チアマゾール(MMI, メルカゾール)やプロピルチオウラシル(PTU, プロパジール、チウラジール)といった、抗甲状腺薬が用いられます。

効果や副作用などの観点から、妊娠初期を除き、チアマゾール(メルカゾール)が使用されることが多いです。4)

無機ヨウ素

ヨウ素は、投与量により甲状腺ホルモンの合成と分泌を抑制する効果があります。

そのため、上記の抗甲状腺薬とヨウ化カリウム(KI)が併用されたり、状況によりヨウ化カリウムが単独で用いられることがあります。

バセドウ病の治療薬の種類や用量は、症状、甲状腺のサイズ、FT4の値などから総合的に判断されます。

ウォルフ・チャイコフ効果

ヨウ素甲状腺ホルモンの原料です。甲状腺の病気の人はヨウ素の摂取に気をつけなくてはいけない、と聞いたことがある方もいるかも知れません。(甲状腺がんやバセドウ病に対する131Iの治療中以外では、日常生活では藻類の過剰摂取に注意する程度でよいと言われています。4))

無機ヨウ素を大量に摂取すると、ヨウ素の有機化が抑制され甲状腺ホルモンの合成と分泌が抑制されます。これをウォルフ・チャイコフ効果といいます。また、中等度から重度のバセドウ病では、ヨウ素投与を継続すると効果に耐性が生じます。これを、エスケープ現象、と呼びます。このヨウ素の効果を利用して、バセドウ病の治療においては、ヨウ化カリウムが処方されることがあります。例えば、ヨウ化カリウム50mgには、無機ヨウ素が38.2mgが含まれています。(ヨウ素の1日の推奨摂取量が0.13mg/日5)、成人での最大許容摂取量は3mg/日4)とされています。)

アイソトープ・手術

下記のような理由から、アイソトープや手術による治療が行われることがあります。

副作用などで抗甲状腺薬の継続が困難な方、抗甲状腺薬での完治が困難な方、抗甲状腺薬の副作用が心配な方、妊娠などで早期の治癒を希望される方など。

βブロッカー

動悸の症状がある方などではβブロッカーで脈拍数をおさえるなど、症状に応じて薬が使用されます。

治療における副作用

バセドウ病で使われれるチアマゾールやプロピオチルウラシルには、下記のような副作用がでることがあります。

皮疹

皮膚が痒くなったり、皮疹が出現することがあります。内服開始後、2-3ヶ月以内に起こりやすいです。4)

肝機能障害

内服開始後少なくとも2ヶ月間は原則として2週に1回の採血による検査が推奨されています。4)

それ以降も、定期的な採血が必要です。

無顆粒球症

白血球が減少してしまうことがあります。そのため、内服開始後少なくとも2ヶ月間は原則として2週に1回の採血による検査が推奨されています。4)

それ以降も、定期的な採血が必要です。

血管炎

血管炎の発症リスクが高くなることが知られています。4)そのため、体調に異変を感じた場合には、早めに主治医の診察を受けることが必要です。

関節痛
治療上の注意点
精神的なストレスを避ける

様々な精神的なストレスが、バセドウ病の発症や再発に影響があることが知られています。4)

禁煙

喫煙により、バセドウ病の発症や再発のリスクが高まり、抗甲状腺薬による治療効果が弱くなってしまうことが知られています。4)

治療期間

甲状腺機能が正常である場合、薬の休薬が検討されます。治療ガイドラインでは、メルカゾール2.5mgの内服で6ヶ月以上甲状腺機能が正常な場合には休薬を検討してもよい、とされています。4)

実際の休薬に際しては、主治医の方としっかりと相談することが大切です。また、休薬後も再発することもあれば、甲状腺機能低下症になることもあるため、定期的に検査をすることが必要です。4)

まとめ

甲状腺機能亢進症は、採血をすることで診断することができます。倦怠感や動悸といったような症状がある場合には、一度当院までご相談ください。

 

参考文献

1)UpToDate:Pathogenesis of Graves' disease 

2)UpToDate:Subacute thyroiditis

3)UpToDate:Painless thyroiditis

4)日本甲状腺学会:バセドウ病治療ガイドライン2019

5)環境省:ヨウ素について

6)日本甲状腺学会:甲状腺疾患診断ガイドライン2024

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、認定内科医

最終更新日:2024/12/20

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME