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循環器専門医の考える、高血圧の薬の選び方

高血圧の治療薬について

高血圧の治療に使われる薬にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴や効果があります。このページでは、代表的な降圧薬についてわかりやすく解説します。ご自身の体質や生活習慣を考慮した薬を選択することが大切です。

高血圧については、こちらのページもご覧ください。

降圧薬の種類

降圧薬は、大きく下記の5つに分類されます。

カルシウムブロッカー

下記のARBとともに、第一選択となることが多い治療薬です。まれに足のむくみがでることがありますので、その際は薬の変更が必要です。

ACE阻害薬/ARB

上記のARBとともに、第一選択となることも多い治療薬です。糖尿病や心不全、腎不全がある方でも優先して使用されます。

ARNI

心不全がある方で優先して使用されます。

サイアザイド系利尿薬

人によっては相性がとてもいいことがあります。

βブロッカー

心不全や不整脈のある方にも処方されます。高血圧に対して単独で使われることはほとんどありません。

たくさんの種類がありますが、それぞれの薬について、詳しく見ていきましょう。

カルシウムブロッカー

カルシウムブロッカーは、血管を拡張させることで血圧を下げるお薬です。

高血圧治療によく用いられ、第一選択となることも多いです。薬価もそれほど高くありません。他の薬と組み合わせて処方することも多く、薬の数を減らせる合剤もあります。

まれにですが、足がむくんでしまうことがあり、その際にはお薬を変更する必要があります。

代表的なカルシウムブロッカー
ノルバスク(アムロジピン)

2.5〜10mgの用量設定があります。高い降圧効果を期待できます。また、ARBやコレステロールのお薬などとの合剤も豊富で、使いやすいお薬です。

アダラートCR(ニフェジピン徐放剤)

10〜60mgの用量設定があります。高い降圧効果を期待できます。

シルニジピン

5〜20mgの用量設定があります。高い降圧効果を期待できます。

ARB(バルサルタン)との合剤があります。

アゼルニジピン

8〜16mgの用量設定があります。降圧効果は上記の薬よりやや弱いです。ARB(オルメサルタン)との合剤があります。

その他のカルシウムブロッカー

カルシウムブロッカーは、上記のように高血圧に使われる他に、冠攣縮性狭心症に用いられる薬、頻脈性不整脈に用いられるものがあります。

冠攣縮性狭心症に用いられる薬

上記のニフェジピンの他に、コニール(ベニジピン)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)といったお薬が用いられます。ジルチアゼムにはあまり降圧効果はありません。

頻脈性不整脈に用いられる薬

ワソラン(ベラパミル)は頻脈性不整脈に用いられることがありますが、あまり降圧効果はありません。頻脈性不整脈に対しては、βブロッカーもよく用いられます。

※カルシウムブロッカーは、グレープフルーツジュースで効果が増強することが知られています。あまり気を遣い過ぎる必要はありませんが、その方の血圧などによって異なるため、詳細は主治医までご確認ください。

ACE阻害薬/ARB

レニン・アンジオテンシン系(RA系)に働き、血圧を下げるお薬です。

高血圧の他に、腎臓、心臓の保護作用もあり、腎不全、心不全、糖尿病の方にもよく使われます。

内服中は腎機能、電解質に注意する必要があるため、定期的な採血が必要です。

下の図のように、ACE阻害薬とARBは同様の系を阻害し、また併用では副作用が増えることが知られているため、ACE阻害薬とARBの併用は原則行いません。

ACE阻害薬

ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は、ARBよりも古くからあるお薬です。ACE阻害薬を内服されている方では空咳が出る方が一定数いるため、最近ではARBを使うことが多くなってきました。一方で、ACE阻害薬は誤嚥性肺炎を予防する効果も知られています。また、心不全の方ではARBよりもACE阻害薬が選択されることがあります。

エナラプリル、イミダプリル、リシノプリル、トランドラプリルなど、様々な種類があります。

ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)

近年、カルシウムブロッカーと並んでよく使用され、第一選択になることも多いお薬です。

ARBにはたくさんの種類がありますが、血圧を下げる作用の強さの順にグループ分けしてみました。

※それぞれの薬にも用量があります。例えばアジルバは10mg-40mgの用量設定がありますので、その降圧効果はあくまで目安と捉えていただければと思います。

※ARBには腎臓や心臓の保護効果があるため、血圧が低い方にはあえて降圧効果が弱いものを選択することもあります。

ロサルタン1)イルベサルタンでは尿酸の低下作用が期待できます。

個々人の背景を考慮してお薬は処方されていますので、内服に関しては主治医とご相談いただければと思います。

ARBの強さの目安

降圧効果が強いグループ

アジルバ(アジルサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)

降圧効果が中くらいのグループ

ミカルディス(テルミサルタン)、ブロプレス(カンデサルタン)

降圧効果が弱いグループ

 ニューロタン(ロサルタン)、 アバプロ(イルベサルタン)、ディオバン(バルサルタン)

また、ARBを使用する際には、降圧効果の強さの他に薬の半減期(薬の血中濃度が半分になる時間)、合剤の有無、尿酸値なども考慮することがあります。

例えば、テルミサルタンは、半減期が20〜24時間と長いことがしられています。

強い薬、弱い薬という考え方

強い薬、弱い薬という概念は、医学的には解釈が難しいと考えています。例えば、上記のアジルサルタンとテルミサルタン、アジルサルタンの方が強い薬で体に悪い?のでしょうか。用量によってもかわるかもしれませんし、何より目標血圧を達成することが重要と考えています。ですので、あまり強い薬、弱い薬と考えずに、ご自身の血圧にあったお薬を選んでいただければと思います。

ARNI

ARNI(アーニー:angiotensin receptor neprilysin inhibitor)は、心不全の薬として有名ですが、高血圧の薬としても使われます。エンレストというお薬には、ARBであるバルサルタンとネプリライシンを阻害するサクビクトリルという成分が入っています。慢性心不全の方はもちろん、心不全がない難治性の高血圧の方にも使われます。

ACE阻害薬、ARBなどと同様に、定期的な採血での腎機能、電解質の確認が必要です。

サイアザイド系利尿薬

利尿薬は心不全で使われることも多いですが、高血圧ではサイアザイド系利尿薬と呼ばれる種類の利尿薬が使われます。サイアザイドは利尿薬に分類されますが、その利尿効果はあまり強くありません。

この薬は電解質(カリウムなど)や腎機能に影響がでることもあり、慎重に使用する必要がありますが、効果のある人にはとても効果があります。塩分摂取量の多い人に効果が出やすい、夜間高血圧(non dipper型)によいといわれたりもしますが、血圧が低下するメカニズムははっきりとは解明されていません。2)

定期的な採血での腎機能、電解質の確認が必要です。また、尿酸値があがることもあります。

代表的な薬
ナトリックス(インダパミド)

心血管イベントを減少させることが報告されています。

ヒドロクロロチアジド
フルイトラン(トリクロルメチアジド)

βブロッカー

高血圧に単独することは少なくなりました。心不全不整脈のある方では積極的に使用されます。

代表的な薬
メインテート(ビソプロロール)

β1選択性が高く、喘息などの病気がある方でも用いられます。

アーチスト(カルベジロール)

 

以上が、大まかな血圧の薬の考え方になります。ご不明な点がありましたら、診察時に遠慮なくご相談いただければと思います。

参考文献

  1. UpToDate:Renin-angiotensin system inhibition in the treatment of hypertension
  2. UpToDate:Use of thiazide diuretics in patients with primary (essential) hypertension

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、循環器専門医

最終更新日:2025/1/9

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