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腎臓を保護する薬とは?【内科医が解説】

このページでは、慢性腎不全腎機能低下に対する治療薬、特に腎臓を保護する薬(RAS阻害薬:ACE阻害薬・ARB、SGLT2阻害薬)についてわかりやすく説明します。

※急性腎不全などに対する治療法は異なります。詳細に関しては、主治医の先生にご確認ください。

腎臓とは?

腎臓は、腰の高さに左右対称に位置する臓器で、通常、体に2つあります。約10cmほどの大きさです。

腎臓には、下記のようないくつかの役割があります。

老廃物の排出

腎臓は血液をろ過し、体内で不要になった老廃物を尿として体外に排出します。このろ過機能のおかげで、体は健康な状態を保つことができます。

例えば、一部の薬剤は腎臓で排出されるため、腎機能の悪い方では薬剤の投与量が異なります。

水分と電解質のバランス調整

腎臓は体内の水分量や、ナトリウムやカリウムといった電解質のバランスを調整しています。

例えば、カリウムの値が低すぎても高すぎても、命に関わる不整脈につながります。

腎機能の悪い方はカリウムの排出機能が低下しています。そのため、腎機能の低下が進行すると、生野菜や果物など、カリウムを多く含む食事を避ける必要があります。

血圧の調節

腎臓は、血圧に関するホルモン(レニン)を分泌します。

赤血球の生成のサポート

腎臓が悪い方では、腎臓で分泌されるエリスロポエチンというホルモンの分泌が低下し、貧血になることがあります。これを腎性貧血と呼びます。

カルシウムとリン、ビタミンDの調節

腎臓は活性型ビタミンDの生成やリンの排出に関わり、カルシウムの代謝に影響を与えます。そのため、腎機能の低下した方でカルシウムなどのバランスがくずれることがあります。

ネフロン:腎臓の構成単位

次に、腎臓の構成単位についてみてみましょう。

腎臓は、ネフロンと呼ばれる構造単位で構成されています。

ネフロンは、輸入細動脈・輸出細動脈・糸球体・ボーマン嚢・尿細管・集合管から構成されています。

輸入細動脈から血液が糸球体に入り、糸球体で血液がろ過され、尿のもと(原尿)を作り、輸出細動脈から血液は出ていきます。

1つの腎臓にはおよそ100万個のネフロンがあると言われています。

腎臓を保護する薬とは

腎臓を保護する薬には、大きく分けて、RAS阻害薬SGLT2阻害薬の2つがあります。(最近になって、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)なども腎保護効果が示唆されています。)

尿蛋白陽性の方

尿中に蛋白がもれでてしまっている慢性腎不全の方(蛋白尿陽性CKDの方)では、糸球体内圧を下げることによって、尿蛋白の改善が期待されます。

そのため、RAS阻害薬による輸出細動脈の拡張(出口の血管を広げる)や、SGLT2阻害薬による輸入細動脈の収縮1)(入口の血管を適切に収縮させる)によって、糸球体内圧をさげることが期待されます。

尿蛋白陰性の方

尿中にタンパクがあまりでていない慢性腎不全の方(蛋白尿陰性CKDの方)では、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬などの腎保護薬の効果がでにくい、と考えられています。

例えば、高血圧性腎硬化症では、弓状動脈〜輸入細動脈の動脈硬化がおこっており、そのため糸球体の血流が低下、糸球体などでの虚血(血流が十分でない)が起こっていると考えられています。他にも様々な原因で尿蛋白陰性の腎機能低下を示しますが、今後の治療法の進歩が期待されています。

※SGLT2阻害薬が腎臓を保護するメカニズムは、他にもいくつか提唱されています。

その他に、腎臓を守るためにできること

腎臓を保護するためには、適切な血圧管理と減塩などが必要です。

摂取するタンパク質の量の制限に関しては、議論の余地のあるところであり、主治医の方とご相談ください。

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参考文献

1)UpToDate:Overview of the management of chronic kidney disease in adults

この記事は、腎臓専門医・透析専門医のレビューを受けています。

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、認定内科医

最終更新日:2025/1/11

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