糖尿病とは|原因とその合併症【内科医が解説】
✔糖尿病は、初期には目立った自覚症状がない病気です。健診などで血糖値の異常を指摘された時は、医療機関を受診しましょう。
✔糖尿病は、腎臓、目、神経の合併症に加え、動脈硬化性疾患(狭心症や脳梗塞など)のリスクが高くなります。しっかりとした治療が必要です。
このページでは、糖尿病の分類とその合併症に関して説明しています。
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糖尿病とその種類
糖尿病は、体が血糖(ブドウ糖)を正常に調節できない状態をさします。血糖の調節は、通常インスリンというホルモンによって行われますが、糖尿病はインスリンの分泌が低下したり、インスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性)が発症の主な原因となります。糖尿病の主なタイプには、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病があります。また、薬剤や、その他の病気が原因で糖尿病になることもあります。糖尿病は生活習慣病とも呼ばれますが、その原因は多岐にわたり、遺伝的要因(体質)も原因となります。
2型糖尿病
最も一般的なタイプです。このタイプでは、体がインスリンに対して適切に反応しない(インスリン抵抗性)場合や、十分なインスリンを分泌できない(インスリン不足)場合があります。食習慣や運動習慣といった生活習慣の改善、飲み薬、場合によってはインスリンなどの自己注射が必要になることもあります。
原因
肥満
生活習慣(運動不足や食事)
遺伝的要因(体質)
同じような生活をしていても、糖尿病になる人とならない人がいます。
加齢
40歳を超えると2型糖尿病になりやすいといわれます。
1型糖尿病
インスリンを産生している、膵臓のβ細胞が破壊されてしまうことでインスリンが分泌されなくなり、発症します。このタイプでは、体の免疫系が誤って膵臓のβ細胞を攻撃してしまいます。外部からのインスリンの補給が必要になります。
急性発症1型糖尿病
1型糖尿病でもっとも頻度の多いタイプです。糖尿病の症状出現から数ヶ月でインスリン依存状態になります。血液検査で自己抗体が陽性となることが多いです。
緩徐進行1型糖尿病
ゆっくりと進行するため、糖尿病を発症した初期の頃は2型糖尿病との判断がつきにくいことがあります。緩徐進行1型糖尿病ではインスリンを生産する力が比較的保たれていることがありますが、その場合もインスリン分泌を促進するような内服薬を避けたり、早期からインスリン治療を行うことで膵臓を保護することが望ましいとされています。
劇症1型糖尿病
数日でインスリンが作れなくなってしまう、とても急激に進行するタイプです。急速に血糖の上昇が進行するため、早急に適切な治療が必要です。また、血糖値の指標であるHbA1cは1-2ヶ月の血糖値の平均値を反映するため、このタイプではHbA1cが高くならないことも特徴です。また、自己抗体が陰性となることも多いです。
妊娠糖尿病
妊娠中に発症する糖尿病で、通常は出産後に改善しますが、将来的に2型糖尿病なりやすいといわれています。
糖尿病の症状
血糖値が高くなることでの症状
喉の乾き、頻尿
体重減少
疲れやすくなる
意識障害
さらに血糖値が高くなると、意識が朦朧としてしまうことがあります。命に関わる危険な状態です。糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群などとよばれます。
糖尿病の初期は、全く自覚症状がないことも多く、健康診断で気づかれたり、急に高血糖の症状が出現する方もいます。また、糖尿病合併症が進行することで、様々な症状が出現します。合併症を予防するために、早く糖尿病に気がつくことが大切です。
合併症
糖尿病の合併症は、糖尿病による動脈硬化症1)(大血管症)と網膜症、腎症、神経障害、足病変などがあります。
大血管症(動脈硬化症)
糖尿病では、動脈硬化による病気のリスクが上昇します。
脳では脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心臓では狭心症や心筋梗塞、他にも足の血管が細くなる抹消動脈疾患(PAD)といったものがあります。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、初期は無症状ですが、進行すると失明の危険があります。糖尿病の診断となった方には、眼科受診をお勧めしています。病状に応じて、レーザー治療などが必要となります。
糖尿病腎症
糖尿病による高血糖は、時間と共に腎臓の細かい血管を破壊し、その機能を低下させ、進行すると血液透析が必要となります。血液検査による腎機能の把握や、尿中のアルブミン/タンパク量の測定などが行われます。ACE/ARBやSGLT2阻害薬といったお薬により進行を緩やかにすることができます。
糖尿病性神経障害
高血糖により神経が障害されます。症状の現れ方は様々です。手袋や靴下を着用しているかのように手足の感覚が鈍くなる方や、常に足に何かが張り付いているような違和感を感じる方、細かくさすような痛みを感じる方もいます。
足病変
糖尿病が進行すると、足の血管が細くなったり、神経障害がおこります。足に水虫や細菌による感染、足の変形やタコ、また、症状が進行すると潰瘍や壊疽がおこることがあります。さらに進行すると、下肢の切断を余儀なくされることがあります。糖尿病の方では、足の感覚が低下し、痛みなどを感じにくくなっているため、症状が進行するまで気づかれないこともあります。
まとめ
糖尿病は多くの方が悩む病気の1つであり、生涯にわたっての管理が必要なことも多い病気です。健診などで血糖値の異常を指摘された際は、一度医療機関を受診し、現在のご自身の状況を確認しましょう。当院ではいつでも糖尿病の相談を受け付けています。
参考文献
日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024
・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。
文責:院長、認定内科医
最終更新日:2025/1/21