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アトピー性皮膚炎|内科医がわかりやすく解説

✔アトピー性皮膚炎の治療には、しっかりとしたスキンケアと適切な塗り薬の使用が大切です。ツルツル、スベスベのお肌をめざしましょう。

初期にしっかりと寛解導入することが大切です。

✔アトピー性皮膚炎は、長期の治療が必要となることも少なくありません。当院では長期通院を続けていただけるよう、環境の整備を行っています。

✔中等症〜重症のアトピー性皮膚炎では、状況に応じて専門医にご紹介いたします。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎は、痒みを伴う湿疹が生じる慢性的な皮膚疾患です。アトピー性皮膚炎は、特に幼少期に発症することが多いですが、成人になってから症状が現れる場合もあります。アトピー素因と関連があることが多いです。また、アレルギーマーチとも関連するため、積極的に、治療を行うことが望ましいと考えられています。

アトピー素因とは?

アトピー素因とは、簡単にいうと、アレルギーを起こしやすい体質のことで、下記のような方が当てはまります。

1)アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚炎といった病気を本人、または家族が持っていること

2)IgE抗体を産生しやすい素因

原因とリスク要因

アトピー性皮膚炎の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要因環境要因両方が関与していると考えられています。乳児・小児期をはじめとして、アトピー性皮膚炎の予防には保湿を中心としたスキンケアが重要です。予防法としては、リスクの高い方における出生後からの保湿剤でのスキンケアや、整腸剤などで腸内環境を整えることが提唱されていますが、現在も研究は進行中です。

また、花粉などのアレルゲンに対する反応によって症状が悪化することがあります。

症状

慢性的な皮膚の乾燥と痒みがあります。

かゆみはよくなったり悪くなったりを繰り返します。

皮疹は、特に顔、首、肘の内側、膝の後ろなどの皮膚が柔らかい部分に現れやすいです。

検査とバイオマーカー

TARC

重症度に一致して上昇し、病勢を鋭敏に反映します。2)

年齢により基準値が異なります。文献2では下記のように基準値が示されています。

6 カ月以上 12 カ月未満:<1,367 pg/mL

1 歳以上 2 歳未満:<998 pg/mL

2 歳~ 15 歳:<743 pg/mL

成人:<450 pg/mL

SCCA2

重症度に一致して上昇し、病勢を鋭敏に反映します。2)

15才以下の方で保険適応があります。保険診療の関係から、上記のTARCの値と同月内に測定することができません。

血清非特異的IgE値

短期的な病勢の変化は反映しませんが、長期的なコントロールの指標として用いられることがあります。2)

血清特異的IgE値

特異的IgE値の上昇(感作)が、アトピー性皮膚炎の原因であることを、必ずしも意味しません。結果の解釈は、主治医の先生とご相談ください。

血液中の好酸球の数

重症度に相関して上昇するため、バイオマーカーとして用いられることがあります。2)

LDH

重症例において上昇することがしられています。2)

治療

アトピー性皮膚炎の治療は、洗って、保湿」を行うスキンケアと、塗り薬で「皮疹をツルツル・スベスベにする」ことが大切です。

スキンケア

ゴシゴシこすらずに、石鹸のでやさしく洗いましょう。よくお湯で石鹸を流した後は、しっかりと保湿を心がけましょう。保湿剤は1日1〜2回塗りましょう。

代表的な薬剤

痒みや炎症を抑えるために、主には外用薬を使用します。詳しくは主治医と必ずご相談ください。

ステロイドの塗り薬

様々な強さがあり、病状、部位により強さを使い分けます。古くからあるお薬ですが、有効性と安全性が多くの臨床研究で検証されており、現在でも第一選択薬として使用されることも多いです。2)

タクロリムスの塗り薬(カルシニューリン阻害薬:プロトピック軟膏など)

刺激感(ほてり感、灼熱感)が気になることがあります。継続的に使用することで、刺激感は1週間程度で少なくなりますまた、日光にあたったり、入浴をした後に刺激が強くなることがあります。対処法として、夜に塗る、入浴後はほてりがとれてからにする、保湿剤を先に塗る、日焼け止めや衣類などで紫外線を避ける、などがあります。2歳以上の方に使用します。皮膚感染のある部位には使用を控える必要があります。妊娠中、妊娠している可能性のある方、授乳中の方は使用を控えた方は主治医と相談してください。

デルゴシチニブの塗り薬(JAK阻害薬:コレクチム軟膏など)

比較的、新しいお薬です。JAK阻害薬に分類され、炎症反応のシグナル伝達を阻害し、炎症細胞の活性化を抑えることで炎症を抑制します。

成人の方では0.5%製剤を1日2回、1回あたり5gを上限に使用します。小児(6ヶ月以上)の方では0.25%製剤、もしくは0.5%製剤を1日2回、1回あたり5gを上限、もしくは塗布面積が体表面積の30%を超えないように使用します。皮膚感染のある部位には使用を控える必要があります。

妊娠中、妊娠している可能性のある方、授乳中の方は使用を控えた方が望ましいと考えられます。

ジファミラストの塗り薬(PDE4阻害薬:モイゼルト軟膏など)

比較的、新しいお薬です。多くの免疫細胞に存在するPDE4 を選択的に阻害し、炎症細胞や上皮細胞内のcAMP濃度を高めることで、炎症性のサイトカイン及びケモカインの産生を制御、皮膚の炎症を抑制します。2)

生後3ヶ月以上~14歳以下の方は0.3%もしくは1%製剤、15才以上の方では1%製剤を使用します。皮膚感染のある部位には使用を控える必要があります。

妊娠中、妊娠している可能性のある方、授乳中の方は使用を控えた方が望ましいと考えられます。

アレルゲンの回避

アレルゲンや刺激物は避けましょう。

生活習慣の改善

バランスのよい食事や定期的な運動を心がけましょう。

アトピー性皮膚炎の長期における治療法の例

(主治医と治療方針をよく相談して、治療を行いましょう。)

リアクティブ療法

湿疹がある時にはステロイド外用剤などの塗り薬を使い、湿疹がないときは保湿剤のみを使います。塗り薬をやめると湿疹が悪化することを繰り返す場合は、プロアクティブ療法に切り替えます。

プロアクティブ療法

リアクティブ療法を行っていても湿疹を何度も繰り返す場合は、プロアクティブ療法を行います。プロアクティブ両方を行うことでステロイド外用薬などの薬の使用量を結果的には減らすことができる、と考えられます。

プロアクティブ療法をはじめる前に、毎日2回以上、保湿などのスキンケアをしっかりと行いましょう。

①まずは塗り薬(ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤)をしっかりと使って、ツルツル、スベスベのお肌にします。ツルツル、スベスベになっても湿疹があったところには、1週間は塗り薬を継続します。

②湿疹が落ち着けば、湿疹があったところに、塗り薬を2日に1回使います。

③さらに落ち着いていれば、塗り薬を週に2日使います。

④全身の保湿は継続しつつ、塗り薬は週に2回使用します。湿疹が再度出てきた場合は、①にもどり、治療を継続します。

⑤塗り薬の頻度をさらに減らします。

また、どの段階においても、皮膚の保湿は必ず行いましょう。

(主治医と治療方針をよく相談して、治療を行いましょう。)

文献2:日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎のガイドライン2024より抜粋

まとめ

当クリニックでは、アトピー性皮膚炎の患者さん一人ひとりに合わせた治療プランを提供しています。アトピー性皮膚炎を治療し、健康な皮膚のバリア機能を取り戻すことは、他のアレルギー疾患を予防するうえでも大切です。時に、治療は長期にわたりますが、全力でみなさんの健康をサポートしていきたいと考えております。

よくある疑問Q&A

ステロイドの塗り薬の副作用が心配です。大丈夫でしょうか?

適切に使用すれば大丈夫です。むしろ、使用しないことで重症化するほうが、より問題であると考えます。

*ステロイドの内服、特に長期の内服は、より慎重な対応が必要です。

ステロイドの塗り薬の副作用は主に2つあります。

皮膚が薄くなる:長期で強いステロイドを使用すると皮膚が薄くなることがありますが、やめれば1ヶ月程度で改善することが知られています。

感染症:病態を見極めて使用することが大切です。

また、上記のステロイド以外の外用薬を使用することで、ステロイドの使用量を減らすことが期待でき、ステロイドから非ステロイドのお薬へと置き換えることも行われています。

プロアクティブ療のメリットは何ですか?

個々人の状況によって異なります。まずは寛解導入を行い、プロアクティブ療法により徐々に塗り薬を減らし、毎日のスキンケアのみで、(保湿剤のみで)ツルツルスベスベのお肌を維持できるのがゴールのひとつと考えています。

参考文献

1)UpToDate: Treatment of eczema

2)日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎のガイドライン2024

・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。

・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。

・記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。

文責:院長、認定内科医

最終更新日:2024/12/2

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