心筋梗塞を発症した後の治療【循環器専門医が解説】
✔心筋梗塞を発症した後、再発を防ぐことが大切です。
✔お薬の数はどうしても増えてしまいます。当院ではそれぞれの人に適した処方の提案をしています。
✔当院では循環器専門医が診療にあたっています。
このページでは、心筋梗塞を起こされた後の治療について、説明しています。
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心筋梗塞とは?
心筋梗塞とは心臓に血液を供給している冠動脈が閉塞してしまい、心筋に酸素が届かなくなってしまう病気です。心臓の筋肉は酸素がたりないとどんどん壊死してしまい、一度壊死してしまった心筋は残念ながらほとんど回復しません。そのかわりに心筋は線維化をおこし、心筋がダメージを受けてしまった部分は収縮できなくなります。
そのため、心筋梗塞をおこしてしまった後の治療は、大きく下記の治療に大別されます。
①冠動脈が再度閉塞しないように予防する治療
②収縮力の低下してしまった心臓を保護する治療(心不全の治療)
検査
心電図
定期的なフォローで、新たな心電図変化がないかを確認します。
運動負荷心電図
心臓に負荷をかけることで、心電図変化をおこしやすくします。当院では個々人に合わせた最適な負荷量となるように、トレッドミルを採用しています。
心エコー
心臓のダメージの程度(心収縮の状態)などを継続的に確認します。
その他
心臓CTや、カテーテル検査など、状況に応じて検査が必要となります。
治療
①冠動脈が再度閉塞しないように予防する治療
心筋梗塞で治療を受けられた方は、カテーテルによるステント治療を受けた方も多いと思います。また、心臓手術を受けられた方もいるかもしれません。個々人の状況により、治療方針は異なります。ここでは一般的な方針について説明しています。
抗血小板薬
いわゆる”血液をさらさらにするお薬”です。バイアスピリンなどの抗血小板薬内服時は、胃を保護する目的で胃薬をいっしょに処方されることも多いです。カテーテル治療を受けた時期に応じて、1剤、または2剤の抗血小板薬が使用されます。また、心房細動といったような不整脈があり抗凝固療法をすでに行われている方は、抗血小板薬ではなく抗凝固薬が優先されます。
コレステロールのお薬
冠動脈の動脈硬化の進行予防には、LDLコレステロールの値の管理が大切です。基本的には、スタチンとよばれる種類のお薬が第一選択として用いられます。特に高用量のスタチンが病気の進行予防に有効です。稀ですが、スタチンの有名な副作用として横紋筋融解症があります。服用後、筋肉痛や褐色の尿がでる、などの症状があった際は服用を中止する必要があります。小腸コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ)は、スタチンが服用できない方や、スタチンでは効果が不十分な場合などに処方されるます。また、PCSK9と呼ばれるお薬が選択されることもあります。
上記のお薬に加え、糖尿病や高血圧といった病気がある場合には、それらの治療も大切です。
②収縮力の低下してしまった心臓を保護する治療
基本的には心不全の治療薬と同じになります。
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利尿薬
心不全が進行すると、体(特に足)がむくむことがあります。体のむくみをとるお薬です。利尿薬自体は症状の改善に有効ですが、心不全の根本的な治療にはなりません。病状に応じて、下記のような心臓を保護する作用のあるお薬との併用が必要です。
ACE阻害薬/ARB/ARNI
心臓の保護薬です。カリウムなどの電解質の値が上昇することがあり、定期的な採血などを行います。
βブロッカー
心臓の保護薬です。増量することで、ふらつきなどの副作用がでることがあります。ゆっくりと増量し、個々人に応じた容量を内服することが大切です。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
利尿薬としての作用もありますが、心不全で使用される場合には、主に心臓の保護薬として使用します。カリウムなどの電解質の値が上昇することがあり、定期的に採血などを行います。
SGLT2阻害薬
糖尿病のお薬としても使われますが、心臓の保護作用もあります。
イバブラジン
脈拍を抑えることで、心不全の悪化を防ぎます。
まとめ
心筋梗塞は、急性期の治療も大切ですが、再発予防もとても大切です。心筋梗塞を発症すると、いきなりたくさんの薬を飲むことになり戸惑うこともあるかもしれません。多くの薬が心筋梗塞を発症された方に有益であると、しっかりとした医学研究に基づいて推奨されています。ご不明な点がありましたら、当院までごご相談いただければと思います。
・この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最善の医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
・この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
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文責:院長、認定内科医、循環器専門医
最終更新日:2025/1/11